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「令和2年度税制改正について」2020.4.8

カテゴリー:お役立ち情報 , 所得税 , 法人税 , 消費税

  1. I.   法人税関連

1.   オープンイノベーションに係る措置の創設

・中小企業者で対象法人に該当するものが、令和2年4月1日から令和4年3月31日までの間に特定株式を取得した場合には、その取得価額の25%の所得控除ができることとなります。但し、特定株式の譲渡その他の取崩事由が生じた場合には、取得から5年を経過した場合を除き、その事由に応じた金額を益金算入することとされました。

・対象法人は青色申告法人で自らの経営資源以外の経営資源を活用し、高い生産性が見込まれる事業を行うこと又は新たな事業の開拓を行うことを目指す株式会社等をいいます。

・特定株式は産業競争力強化法の新事業開拓事業者のうち同法の特定事業活動に資する事業を行う内国法人又は外国法人の株式のうち、次の要件を満たすことにつき経済産業大臣の証明があるものをいいます。

① 対象法人が取得するもの又はその対象法人が出資額割合50%超の唯一有限責任組合員である投資事業有限責任組合の組合財産等

② 資本金の増加に伴う払込みにより交付されるものであること

③ その払込金額が1,000万円以上であること など

 

2.   5G(第5世代移動通信システム)投資促進税制の創設

・特定高度情報通信等システムの普及の促進に関する法律の制定を前提に、青色申告法人で一定のシステム導入を行う同法の認定特定高度情報通信等システム導入事業者に該当するものが、同法の施行日から令和4年3月31日までの間に、特定高度情報通信用認定等設備の取得等をして、国内にある事業の用に供した場合には、その取得価額につき30%の特別償却と15%の税額控除との選択適用ができることとなりました。

 

3.   企業版ふるさと納税の拡充・延長

・認定地方公共団体に寄付をした場合の法人税額・法人住民税額・法人事業税額の特別控除制度について、税額控除割合を6割(現行は3割)に引き上げた(企業負担1割)上で、その適用期限が5年(令和6年度まで)延長されました。

 

4.   連結納税制度の見直し

・企業グループ全体を一つの納税単位とする現行制度に代えて、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から、企業グループ内の各法人を納税単位として、各法人が個別に法人税額の計算及び申告を行いつつ、損益通算の調整を行うグループ通算制度へ移行します。

・現行制度では、100%グループ内の新設法人等を除いて、グループ通算制度の適用開始又は通算グループへの加入に際して資産に時価評価課税を行うとともに繰越欠損金が切捨てられます。この時価評価課税・繰越欠損金切捨の対象外となる法人の範囲を広げ、現行の100%グループ内の新設法人及び適格株式交換等により加入した株式交換等完全子法人に加えて、完全支配関係継続、事業継続要件等の適格組織再編と同様の要件を満たして加入する法人が追加されます。

 

5.   少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の延長

・中小企業者等の   少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、対象法人から連結法人を除外し、常時使用する従業員数の要件を500人以下(現行1,000人以下)に引き下げた上で、適用期限が令和4年3月31日まで2年間延長されました。

 

6.   交際費課税の特例措置の延長

・接待飲食費に係る損金算入の特例対象法人から資本金の額等が100億円を超える法人を除外した上で、交際費課税特例措置の適用期限が2年延長されました。

 

 

II. 消費税関連

1.   居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除制度等の改正

・居住用賃貸建物の課税仕入については仕入税額控除制度の適用を認めないこととされます。居住用賃貸建物の賃貸収入は非課税売上ですが、従来、他の課税売上を作為的に作り加えることで、課税売上割合を95%以上にまで引き上げて居住用賃貸建物の課税仕入も仕入税額控除の適用を受けることができましたが、これを防止するために見直されます。但し、住宅貸付の用に供しないことが明らかな部分については、引き続き仕入税額控除制度の対象とされます。この改正は令和2年10月1日以後の居住用賃貸建物の仕入に適用されますが、同年3月31日までに締結した契約に基づき同年10月1日以後に居住用賃貸建物の仕入を行った場合には適用されません。

・仕入税額控除の適用を認めないこととされた居住用賃貸建物について、その仕入の日から同日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間の末日までに、住宅の貸付以外の貸付用に供した場合又は譲渡した場合には、仕入控除税額を加算調整されます。

・住宅貸付に係る契約において貸付に係る用途が明らかにされていない場合であっても、その建物の状況等から人の居住の用に供することが明らかな貸付けについては消費税を非課税とされます。これは令和2年4月1日以後に行われる貸付に適用されます。

・高額特定資産を取得した場合の事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を制限する措置の対象に、「高額特定資産である棚卸資産が納税義務の免除を受けないこととなった場合等の棚卸資産に係る消費税額の調整措置の適用を受けた場合」が加えられます。これは令和2年4月1日以後に棚卸資産の調整措置の適用を受けた場合に適用されます。

 

2.   法人に係る消費税の申告期限の特例

・企業の事務負担の軽減等を図る観点から、法人税の確定申告書の提出期限の延長の特例の適用を受ける法人が、消費税の確定申告書の提出期限を延長する旨の届出書を提出した場合には、提出をした日の属する事業年度以後の各事業年度の末日の属する課税期間に係る消費税の確定申告書の提出期限が1ヵ月延長されます。これは令和3年3月31日以後に終了する事業年度の末日の属する課税期間から適用されます。

 

 

III.   所得税関連

1.   確定拠出年金法等改正に伴う税制の措置

・確定拠出年金制度等について、確定拠出年金法等の改正後も現行税制措置が適用されます。

(加入可能年齢の見直し)

対象

改正前

改正後

企業型確定拠出年金DC 厚生年金被保険者のうち 65歳未満 厚生年金被保険者70歳未満
個人型年金iDeCo 国民年金被保険者のうち 60歳未満 国民年金被保険者65歳未満

 

(受給開始時期の拡大)

対象

改正前

改正後

企業型DC・iDeCo 60歳から70歳の間で選択 上限75歳未満で選択可
確定給付企業年金DB 60歳から65歳の間で設定 70歳までに拡大

 

2.   NISA制度の見直し・延長

・一般NISAについては、積立てを行っている場合に別枠の非課税投資ができる2階建ての制度に見直した上で、口座開設可能期間が5年延長されます。投資対象商品について、1階部分はつみたてNISAと同様として、2階部分は現行の一般NISAから高いレバレッジ投資信託など安定的な資産形成に不向きな商品が除かれます。また、非課税期間20年間の現行のつみたてNISAについては5年延長し、ジュニアNISAについては利用実績が乏しいことから延長せず新規口座開設を令和5年までとされます。

新NISA

つみたてNISA

年間投資上限額 1階-20万円 2階-102万円 40万円
非課税期間 5年間 20年間
口座開設可能期間 2028年まで 2042年まで
投資対象商品 1階:一定の公募株式投資信託等2階:上場株式・公募株式投資信託等 一定の公募株式投資信託等

 

3.   エンジェル税制の対象要件の拡大

・クラウドファンディング等を通じた投資にもエンジェル税制の適用が広げられます。

① エンジェル税制の対象となる会社に次の要件を満たす会社が追加されます。

内国法人で、設立10年未満の中小企業者及び第一種少額電子募集取扱業務を登録された者を通じて投資を受ける株式会社等

② エンジェル税制対象株式の取得時特例につき適用対象会社の範囲が広げられます。

前事業年度までのキャッシュフローが赤字で、試験研究費の収入金額に対する割合が5%を超える等の設立後3年以上5年未満の一定の株式会社

 

4.   寡婦(寡夫)控除等の見直し

・居住者が現に婚姻をしていない者のうち一定要件を満たす場合、その者のその年分の総所得金額等から35万円が控除されます。

・扶養親族その他その者と生計を一にする子を有する寡婦の要件に合計所得金額が500万円以下であることを加えるなど寡婦と寡夫に対する控除の差が解消されます。

 

5.   国外居住親族に係る扶養控除の制限

・国外居住親族に係る扶養控除の対象となる親族から、30歳以上70歳未満の者で下記に該当しない者は除外されました。これは令和5年分以後の所得税について適用されます。

①  留学により非居住者となった者で留学ビザを有しその旨の証明書類を提出した者

②  障害者控除を受けている者

③  送金関係書類によってその者にその年に38万円以上の送金等を確認できる者

 

6.   住宅ローン控除と譲渡特例の二重適用を排除

・現行法上、居住用財産の取得の際に住宅ローン控除の適用を受けた3年後に従前住宅等を譲渡して居住用財産の譲渡特例を重複できる場面がありましたが、新規住宅の居住年から3年後に従前住宅等を譲渡した場合においても住宅ローン控除と譲渡特例の二重適用を排除する措置が設けられました。これは令和2年4月1日以後に従前住宅等を譲渡する場合に適用されます。

 

7.   低未利用土地等の譲渡に100万円特別控除を創設

・個人が都市計画区域内にある低未利用土地等を譲渡した場合、下記要件を満たすときはその年中の低未利用土地等の譲渡に係る長期譲渡所得の金額から100万円を控除することができます。

①  譲渡価額がその上にある建物等を含めて500万円以下であること

②  所有期間が5年を超えること

③  低未利用土地等であることについて市区町村による確認が行われたこと

④  その譲渡がその個人の配偶者・親族等に対するものではないこと

 

8.   国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例の創設

・国外不動産所得の損失の金額のうち国外中古建物の償却費に相当する部分の金額は損失が生じなかったものとみなされます。そのため将来、国外中古建物を譲渡した場合、譲渡所得の計算上、その取得費から生じなかったものとみなされた償却費は控除されません。従来の国外不動産所得を意図的にマイナスにして給与所得等と損益通算する節税スキームに対する措置です。これは令和3年より適用されます。

 

9.   配偶者居住権等の取得費の計算方法を明確化

・配偶者居住権又は配偶者敷地利用権が消滅した場合、消滅等の対価としての譲渡所得において控除する取得費の計算は以下のように明確化されました。

居住建物等の取得費×配偶者居住権等割合-設定から消滅等までの期間に係る減価の額

・居住建物等の相続人が上記の権利消滅前に当該居住建物等を譲渡した場合の譲渡所得において控除する取得費は以下のように明確化されました。

居住建物等の取得費-配偶者居住権又は配偶者敷地利用権の取得費

 

10. 医療費控除の適用を受ける確定申告書の添付書類

・現行の医療費の額等を通知する書類の添付に代えて次に掲げる書類で国税庁長官が定めるものなどの要件を満たした書類の添付ができることとなります。

①  審査支払機関の医療費の額等を通知する書類

②  医療保険者の医療費の額等を通知する書類に記載すべき事項が記録された電磁的記録を一定の方法により印刷した書面

e-Taxで申告を行う場合、上記書類の記載事項を入力して送信するときはこれらの書類の確定申告書への添付に代えることができることとなります。この場合、税務署長は確定申告期限から5年間、必要に応じこれらの書類の提示・提出を求めることができます。これは令和3年分以後の確定申告書を提出する場合に適用されます。

 

 

IV. 資産税関連

1.   所有者不明土地等に係る固定資産税の課題への対応

・所有者不明土地等が全国的に増加しており、迅速・適正な課税に資する観点から、相続人等に対して「現に所有している者」として、その氏名、住所等を申告させることができる制度が創設されました。

① 現に所有している者の申告の制度化

納税義務者が死亡している場合、市町村長は条例にて当該現所有者の氏名、住所その他固定資産税の賦課徴収に必要な事項を申告させることができ、罰則規定も設けられます。これは令和2年4月1日以後の条例の施行日以後に現所有者であることを知った者に適用されます。

② 使用者を所有者とみなす制度の拡大

市町村は一定調査後所有者が1人も明らかにならない場合、その使用者を所有者とみなして固定資産台帳に登録し固定資産税を課すことができることとなります。これは令和3年度以後の年度分の固定資産税に適用されます。

 

 

V.   国際課税関連

1.   子会社からの配当と子会社株式の譲渡を組合せた租税回避への対応

・法人が特定関係子法人から受ける配当等の額が株式等の帳簿価額の10%相当額を超える場合には、その対象配当金額のうち益金不算入相当額を、その株式等の帳簿価額から引き下げる改正が行われました。子会社からの配当金は親会社にとって益金不算入となり、その子会社の価値を下げてその後売却することにより譲渡損失を捻出する節税に対応したものです。但し、次に掲げる配当等は適用除外とされます。

① 内国普通法人である特定関係子法人の設立の日から特定支配関係発生日までの間において、その発行済株式の総数等の90%以上を内国普通法人等又は居住者が有する場合の対象配当金額

② 次の算式に該当する場合における特定関係子法人から受ける対象配当金額

[(イ)利益剰余金の額-(ロ)配当等の総額] ≧ (ハ) 利益剰余金の調整額

(イ) 利益剰余金の額……配当決議日の属する特定関係子法人の事業年度開始の日における当該特定関係子法人の利益剰余金の額

(ロ) 配当等の総額……当該開始の日からその配当等を受ける日までの間に特定関係子法人の株主が受ける配当等の総額

(ハ) 利益剰余金の調整額……特定支配関係発生日の属する特定関係子法人の事業年度開始の日における利益剰余金の額に一定の調整を加えた金額

③ 特定支配関係発生日から10年を経過した日以後に受ける配当等の額

④ 対象配当金額が2,000万円を超えない場合におけるその対象配当金額

 

2.   外国子会社合算税制の見直し

・部分合算課税制度の対象となる受取利子等の額の範囲から、その本店所在地国において役員等が棚卸資産の販売の事業及びこれに付随する事業(棚卸資産の販売から生ずる利子(いわゆる「ユーザンス金利」)に係る事業に限る。)を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事している外国関係会社が、非関連者に対して行う棚卸資産の販売から生ずる利子の額が除外されます。これは外国関係会社の令和2年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます。

・投資法人等が合算課税の適用を受ける場合には、外国関係会社の所得に対して課される外国法人税の額のうち、合算対象とされた金額に対応する部分の金額は、その投資法人等が納付した外国法人税の額とみなして、投資法人等の配当等に係る二重課税調整の対象とされます。これは外国関係会社の令和2年4月1日以後に終了する事業年度について適用されます。

 

3.   外国税額控除における控除対象外国税額の範囲の見直し

・日本での所得と認識されない金額に対して課されるものとして外国税額控除の対象から除外される外国法人税の額に、次の外国法人税の額が加えられます。これは令和3年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用されます。

①   外国法人等の所得でこれを内国法人の所得とみなして当該内国法人に対して課される外国法人税の額

②   内国法人の国外事業所等において、当該事業所等から本店等又は他の者への支払金額等がないものとした場合に得られる所得に対して課される外国法人税の額

 

4.   過大支払利子税制における対象外支払利子等の範囲の見直し

・外国法人の恒久的施設が有する債権に係る経済的利益を受ける権利が、その本店等に移転されることがあらかじめ決まっている場合は、法人からその恒久的施設に支払われる利子等の額は対象外支払利子等の額から除外されます。

 

 

VI. 納税環境整備関連

1.   電子帳簿保存制度の見直し

・電子的に受け取った請求書等をデータのまま保存する場合の要件について、ユーザーが自由にデータを改変できないシステム等を利用している場合には、タイムスタンプの付与を不要とするなど、選択肢が拡大されます。

・国税関係帳簿書類の保存義務者が電子取引(取引情報の授受を電磁的方式により行う取引)を行った場合の電磁的記録の保存範囲に、令和2年10月1日から、次の方法が追加されます。

①   電磁的記録について訂正又は削除を行った事実及び内容を確認することができるシステム(訂正又は削除を行うことができないシステムを含む。)を利用することで、その電磁的記録の授受及び保存を行う方法

②   発行者のタイムスタンプが付された電磁的記録を受領した場合において、その電磁的記録を保存する方法

 

2.   振替納税の通知依頼及びダイレクト納付の利用届出の電子化

・振替納税の通知依頼及びダイレクト納付の利用届出について、e-Taxによる申請を可能とし、送信をする際に申請をする人の電子署名及び電子証明書の送信が必要なくなります。これは令和3年1月1日以後に行う申請について適用されます。

 

3.   国外財産調書制度等の見直し

・相続開始年の12月31日において有する国外財産に係る国外財産調書については、相続国外財産を記載しないで提出することができることとされます。この場合、国外財産調書の提出義務については、国外財産の価額の合計額からその相続国外財産の価額の合計額を除外して判定します。財産債務調書における相続財産についても同様です。これは令和2年分以後の国外財産調書又は財産債務調書について適用されます。

・国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の適用対象に、相続国外財産に対する相続税に関し修正申告等があった場合が追加されます。但し、以下の場合は適用外とされます。これは令和2年分以後の所得税又は令和2年4月1日以後に相続等により取得する財産に係る相続税について適用されます。

①   相続国外財産を有する者の責めに帰すべき事由がなく提出期限内に国外財産調書の提出がない場合

②   同様に国外財産調書に記載すべき相続国外財産についての記載がない場合(記載不備含む)

・相続国外財産に対する相続税に関し修正申告等があった場合の過少申告加算税等の特例の適用の判定基礎となる国外財産調書は以下のとおりとなります。これは令和2年分以降の所得税又は令和2年4月1日以後に相続等により取得する財産に係る相続税について適用されます。

イ 被相続人の相続開始年の前年分の国外財産調書

ロ 相続人の相続開始年の年分の国外財産調書

ハ 相続人の相続開始年の翌年分の国外財産調書

①  上記何れかに相続国外財産の記載がある場合は軽減措置が適用されます。

②  上記全てに相続国外財産の記載がない場合は加重措置が適用されます。

・国外財産を有する者が、国税当局の求めに応じ、国外財産の取得等に係る書類を指定された一定の期日までに提示・提出しない場合、指定日の60日を超えない範囲内で提示・提出がない場合は、軽減措置は適用せず、加重措置は適用前の加算割合(5%)に5%追加されます。これは令和2年分以降の所得税又は令和2年4月1日以後に相続等により取得する財産に係る相続税について適用されます。