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「令和5年度税制改正について」2023.6.4

カテゴリー:お知らせ

Ⅰ.法人関連

1.  特定資産の買換特例の適用要件の改正 

・同一の期中に特定資産買換えをした場合の特例の適用において、譲渡資産の譲渡日又は買換資産の取得日のいずれか早い日の属する3月期間(四半期)の末日の翌日以後2月以内に、所轄税務署長に特例適用を受ける旨・取得予定資産又は譲渡予定資産の種類等の事項を記載した届出書を届け出ることが適用要件に加えられました。この措置は令和6年4月1日以後の買換資産の取得について適用されます。

 

2.   研究開発税制の見直し

・試験研究費のうちサービス開発に係る試験研究のために要する一定の費用について、既に有する大量情報を用いる場合も適用対象とされました。

・デザインに関して性能向上要件を追加し、性能向上を目的としないことが明らかな開発業務の一部として考案されるデザインに基づき行う設計及び試作に要する費用は適用対象から除外されました。

・一般型試験研究費の税額控除率の下限を1%(現行:2%)に引き下げた上、その上限を14%(原則:10%)とする特例の適用期限が3年間延長されました。

・令和5年4月1日から令和8年3月31日までの間に開始する各事業年度の控除税額の上限は、増減試験研究費割合が4%を超える部分1%当たり当期法人税額の0.625%(5%を上限)を加算し、増減試験研究費割合がマイナス4%を下回る部分1%当たり当期法人税額の0.625%(5%を上限)を減算する特例が設けられました。

・オープンイノベーション型特別試験研究費の額に、特別新事業開拓事業者との共同研究及び特別新事業開拓事業者への委託研究に係る試験研究費の額が加えられ税額控除率が25%とされました。また、新規高度研究業務従事者(博士号取得者で取得から5年を経過していない者等)に対する人件費を特別試験研究費の額に加え、その税額控除率が20%とされま した。

 

3.   オープンイノベーション促進税制の見直し

・従来のオープンイノベーション促進税制の対象となる特定株式は新規発行株式で、取得価額上限100億円の25%の25億円まで損金算入できましたが、スタートアップの出口戦略の多様化を促すため、要件を満たせばM&A時の既存株式の取得に対しても取得価額上限200億円の25%の50億円まで損金算入できることとなりました。対象となる特定株式に特別新事業開拓事業者の株式で、総株主の議決権の過半数を有することとなるものが加えられたうえで、取得価額上限200億円下限5億円となりました。

・特定株式に係る特別勘定の取り崩しについても、取得から5年を経過した場合には特別勘定を取り崩して益金算入されますが、その取得日から5年以内のいずれかの事業年度において、「売上高が1.7倍かつ33億円以上となったこと」等の成長要件に該当する場合には益金算入が不要となりました。

 

4.   中小企業投資促進税制等の見直し

・中小企業投資促進税制(30%特別償却又は7%税額控除)と中小企業経営強化税制については、対象資産からコインランドリー業(主要な事業であるものを除く)の用に供する機械装置でその管理のおおむね全部を他の者に委託するものが除外され、適用期限が2025年3月31日まで延長されました。

 

5.   生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税特例措置創設

・中小企業等経営強化法に規定する市町村の導入促進基本計画に適合し、かつ、労働生産性を年平均3%以上向上させるものとして認定を受けた一定の機械装置等で、生産・販売活動等の用に供されるものに係る固定資産税について、課税標準が最初の3年間は価格の2分の1とされました。但し、その計画書に1.5%以上の賃上げを表明する記載がある場合は課税標準が一定期間3分の1となりました。これは、令和5年4月1日から令和7年3月31日までに取得される機械装置等について適用されます。

 

6.   つみたてNISA奨励金の所得拡大促進税制適用

・法人が使用人に対して支給する「つみたてNISA奨励金」で所得税法の給与等に該当するものは、所得拡大促進税制の対象となる給与等に該当することが明確化されました。

 

7.   株式交付M&A税制の見直し

・法人が、その有する株式を発行した他の法人を株式交付子会社とする株式交付によりその株式を譲渡し、その株式交付に係る株式交付親会社の株式の交付を受けた場合には、その譲渡した株式の譲渡損益のうちその交付を受けた株式交付親会社の株式に対応する部分の計上が繰り延べられますが、今回の改正では、この特例の対象から、株式交付後に株式交付親会社が同族会社(非同族の同族会社を除く)に該当する場合が除外されました。この措置は令和5年10月1日以後に行われる株式交付について適用されます。

 

 

II. 消費税関連

1.   小規模事業者の納税額が売上税額の2割(2割特例)の経過措置

・インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった者は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの各課税期間について、納税額を売上税額の2割に軽減する経過措置が講じられました。

・事前の届出は必要なく、消費税の確定申告書に2割特例の適用を受ける旨を付記すればよく、消費税の申告毎に適用を受けるか否かの選択が可能で、簡易課税制度選択届出書を提出していても2割特例を選択適用できます(簡易課税制度選択届出書の取下げ等は不要)。

・登録申請書と簡易課税制度選択届出書を既に提出している事業者が、申告時に2割特例と本則課税を選択適用するためには、登録開始日を含む課税期間中に取下書を提出すれば認められます。

 

 2.   少額な課税仕入れ等に係る6年間のインボイス保存免除

・基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの6年間に国内において行う課税仕入れについて、その支払対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められます。

 

3.   少額な対価の返還に係るインボイス交付義務の免除

・振込手数料相当額を値引きとして処理する場合等の事務負担を軽減する観点から、令和5年10月1日以後の課税資産の譲渡等につき行う売上対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合には、適格返還請求書の交付義務が免除されます。

 

 

III.  資産税関連

 1.   相続時精算課税制度の改正

・相続時精算課税制度を選択した人が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別に、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとなり、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされるその特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、その各110万円を控除した後の残額とされました。

・相続時精算課税制度を選択した人が特定贈与者から贈与により取得した一定の土地又は建物がその贈与の日から相続税申告書の提出期限までの間に災害によって一定の被害を受けた場合は、贈与時の価額からその被害を受けた部分に相当する額を控除した残額を相続税の課税価格に加算することとなりました。

・上記2点の改正は令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税・贈与税について適用されます。


 2.   相続税の課税価格へ加算される生前贈与の期間の延長

・相続税の課税価格へ加算される生前贈与の対象期間が現行の3年から7年へ延長されました。但し、その延長された4年間のうちに受贈した財産については、その合計額から100万円を控除した金額が相続税の課税価格に加算されることとなりました。これは、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用されます。

 

 3.   空き家に係る3,000万円控除の特例の見直し

・空き家発生の抑制のため、空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除について、適用期限を4年延長するとともに、買主が譲渡後に耐震改修工事又は除却工事をする場合も適用対象とされました。これは、令和6年1月1日以後の譲渡について適用されます。

 

4.   教育資金の一括贈与非課税措置の見直し

・信託等があった日から教育資金管理契約の終了日までに贈与者が死亡した場合において、その贈与者の相続税の課税価格合計額が5億円を超えるときは、受贈者が23歳未満の場合においても、その管理残額をその受贈者が当該贈与者から相続等により取得したものとみなして課税されます。

・受贈者が30歳に達した場合等において、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額に贈与税が課されるときは一般税率が適用されます。

・上記2点の改正は、令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る相続税・贈与税について適用し、制度の適用期限が令和8年3月31日まで3年延長されます。

 

5.   結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置の見直し

・直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、受贈者が50歳に達した場合において、非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額に贈与税が課されるときの贈与税税率は、一般税率(改正前は特別税率)を使用することとした上で、適用期限が令和7年3月31日まで2年延長されました。

 

 

IV. 所得税関連

1.   NISA制度の抜本的拡充・恒久化

・年間投資上限額を拡充し、「つみたて投資枠」は現行のつみたてNISA(年40万円)の3倍の120万円に拡充し、「成長投資枠」は現行の一般NISA (年120万円)の2倍の240万円に拡充し、両枠を併用することで、年間投資上限額は計360万円となりました。年間投資上限額とは別に、一生涯にわたる非課税限度額を設定し、現行のつみたてNISA(800万円)の倍以上となる1,800万円とし、このうち「成長投資枠」はその内数として現行の一般NISA (600万円)の2倍の1,200万円とされました。これは、令和6年1月1日以後に設けられる「つみたて投資枠」「成長投資枠」から適用されます。


 2.   スタートアップへの再投資に係る非課税措置の創設

・スタートアップ企業を支援するため、居住者等が、保有株式を売却して生じた譲渡益を資金として、①起業した場合や、②プレシード・シード期のスタートアップ企業へ投資した場合(以下、①②を合わせて「再投資」という。)、再投資分の譲渡益について上限20億円の非課税措置が創設されました。プレシード・シード期のスタートアップ要件は、現行のエンジェル税制の対象である未上場ベンチャー企業のうち、設立5年未満であること、前事業年度まで売上が生じていないこと、営業損益がマイナスであることなどです。現行では、エンジェル税制の適用で、再投資分の譲渡益については課税の繰延べができますが、改正後は、非課税措置の対象となる20億円を超えた部分が課税の繰延対象となります。

 

3.   給与所得の源泉徴収票に係る提出方法の見直し

・給与等の支払者は、「給与支払報告書」を市区町村に提出すれば、税務署長に「源泉徴収票」を提出したものとみなされることとなりました。これに伴い、「源泉徴収票」の提出範囲を「給与支払報告書」と同様にし、給与等の支払金額が30万円以下の中途退職者については提出不要となりました。公的年金等の源泉徴収票についても、同様の措置が講じられます。これは、令和9年1月1日以後に提出すべき給与所得及び公的年金等の源泉徴収票について適用されます。

 

 

V.   納税環境整備関連

1.   スキャナ保存制度要件の見直し

・スキャナ保存制度の要件である「入力者等に関する情報の確認要件」が廃止されました。

・スキャナで読み取った際の「解像度、階調及び大きさに関する情報の保存要件」が廃止されました。

・相互関連性要件について、相互にその関連性の確認を必要とする書類を、契約書・領収書等の「重要書類」に限定されました。

 

2.   高額及び反復無申告に対する加算税の加重措置

・無申告加算税の割合(現行:15%(税額50万円超は20%))について、納付すべき税額が300万円超の部分に対する割合が30%に引き上げられます。

・現行の「過去に無申告加算税又は重加算税が課されたことがある場合に加算割合を10%加重する措置」の対象に、期限後申告等があった場合のその期限後申告等に係る国税の前年度及び前々年度のその国税の属する税目について、「無申告加算税又は重加算税を課されたことがあるとき、又はその無申告加算税等に係る賦課決定をすべきと認めるときに課する無申告加算税等が加えられます。

・上記2点は、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用されます。