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「2019年度税制改正について」2019.4.24

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  1. I.   消費課税関連

 

  • 1.   消費税の軽減税率制度の実施

・2019年10月1日より消費税が現行の8%から10%に引き上げられます。同時に飲食料品等の軽減税率制度が実施されます。2018年9月末までに契約したリース契約のリース料等経過措置の取引税率は従来通りですので、今後取引仕訳を下記3区分しなければならないことに注意が必要です。

2019年9月30日まで   2019/10/1以降・標準税率   軽減税率

消費税率    6.3%         7.8%      6.24%

地方消費税率  1.7%         2.2%      1.76%

合計      8.0%         10.0%      8.0%

 

  • 2.   軽減税率の対象品目・軽減税率が適用されるものは「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読契約が締結された週二回以上発行される新聞」です。「酒類・外食を除く飲食料品」は食品表示法に規定する食品(酒類類を除く)をいい、一定の一体資産を含みますが、下記のように外食やケータリング等は対象に含まれません。

8%軽減税率                   10%

①米、野菜、果実、食肉、貝類、海草等       ①外食

①麺類、パン類、菓子類、調味料、飲料、加工食品等 ①ケータリング、出張調理

①添加物(食品衛生法に規定するもの)       ①酒類

①一体資産(一定要件を満たすもの)        ①医薬品・医薬部外品・再生医療等製品

  • 3.軽減税率の対応業務
  • (仕入・経費)

・軽減税率対象の仕入・経費があるか確認します。軽減税率対象品目の売上がなくても、会議費・交際費等として飲食料品を購入する場合は対応が必要です。

・軽減税率対象の仕入・経費がある場合、区分記載請求書等保存方式の下では、請求書等に「軽減税率対象品目である旨」や「税率の異なるごとに合計した税込金額」の記載がなければ、その取引の事実に基づき追記することも可能です。

・請求書等に基づき、仕入・経費を税率毎に分けて帳簿等に記載することが必要です。

(売上)・軽減税率対象品目を確認し、顧客からの問合せに答えられる準備をします。

・軽減税率対象品目の売上がある場合、区分記載請求書等保存方式の下では、請求書等に「軽減税率対象品目である旨」や「税率の異なるごとに合計した税込金額」を記載して交付します。

・請求書等(控)に基づき、売上を税率毎に分けて帳簿等に記載することが必要です。

 

  • 4.   適格請求書等保存方式(インボイス制度)の導入

・2023年10月から区分記載請求書等の保存に加えて「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が導入されます。

・2023年10月1日以降は税務署長に申請して登録を受けた課税事業者であることを示す登録番号を記載した「適格請求書」が仕入税額控除の要件となります。

 

II. 法人税関連

 

  • 1.   研究開発税制の見直し

・試験研究費の総額に係る税額控除制度(以下総額型といいます)の税額控除率を増加インセンティブが強化されたカーブに見直されました。

・試験研究費が平均売上金額の10%超の場合の特例(高水準型)が総額型の一部として改組された上で税額控除率が割増しされました。

・一定のベンチャー企業の控除上限額が当期法人税額の25%から40%に引き上げられました。

・中小企業技術基盤強化税制について、増減試験研究費割合が5%を超える場合の特例の基準割合を5%から8%に引き上げるとともに期限を2年延長しました。

・オープンイノベーション型税額控除制度に大企業や研究開発型ベンチャー企業に対する委託研究等を対象として追加し、控除の上限を2倍に引き上げました。

 

2.   適格組織再編成の範囲等の拡充

・企業が他の会社を完全子会社にした後に当該完全子会社を存続会社として完全親会社と逆さ合併を行った場合、従来は株式継続保有要件を満たせないために非適格組織再編とされていましたが、合併直前までの関係により株式継続保有要件を判定する(完全子会社にした時に逆さ合併が見込まれている場合は適格組織再編)こととされました。

・三角合併等における再編当事者が対価として直接の親会社以外の完全親会社の株式を交付する場合、従来は対価として直接の親会社株式のみを適格再編としていましたが、間接保有関係の親会社株式を交付する場合も適格再編とされました。

 

  • 3.   中小企業防災・減災投資促進税制の創設

・中小企業等経営強化法の事業継続力強化計画又は連携事業継続力強化計画の認定を受けた中小企業者が、計画に係る特定事業継続力強化設備等の取得等をして事業の用に供した場合には、取得価額の20%の特別償却ができる制度が創設されました。

・特定事業継続力強化設備等とは認定事業継続力強化計画又は連携事業継続力強化計画に記載された1単位100万円以上の機械装置、1単位30万円以上の器具備品及び1単位60万円以上の建物附属設備をいいます。

 

4. みなし大企業の範囲の改正

・中小企業者の範囲から除外されている大企業の子会社である「みなし大企業」の範囲について、大法人の100%子法人及び100%グループ内の複数の大法人に発行済株式の全部を保有されている法人が追加され、判定対象となる法人の発行済株式からその有する自己株式は除外されることとなりました。

 

  • 5.   仮想通貨に関する課税関係の整備

・仮想通貨について、以下の改正が行われました。

①   期末に、活発な市場が存在する仮想通貨は時価で、活発な市場が存在しない仮想通貨は原価法(会計上は切放し低価法)で評価する。

②   譲渡損益は譲渡に係る契約をした日の属する事業年度に計上する。

③   譲渡原価の算出は移動平均法又は総平均法による原価法(法定算出方法は移動平均法)とする。

④   期末に有する未決済の仮想通貨の信用取引等については、期末に決済したものとみなして損益相当額を計上する。

・上記の改正は平成31年4月1日以後に終了する事業年度に適用されます。

 

  • 6.   特別法人事業税の創設

・法人事業税率を引下て新たに特別法人事業税が創設されました。特別法人事業税は法人事業税と併せて都道府県に申告納付しますが、国税として徴収した後に特別法人事業譲与税として各都道府県に譲与されます。

・資本金1億円以下の普通法人の法人事業税率は9.6%から7.0%へ(資本金1億円超は3.6%から1.0%へ)引き下げられると共に特別法人事業税として法人事業税の37%(資本金1億円超は260%)が課されます。

 

  • 7.   医療用機器の特別償却制度の創設

・医師の勤務時間短縮のために必要な器具備品又はソフトウエアの取得価額の15%が特別償却として認められました。

・地域医療提供体制確保に資する病床の再編等の建物等の取得価額の8%が特別償却として認められました。

 

  • 8.   法人設立届等の添付書類の簡素化

・法人設立届出書について、定款等の写し以外の書類の添付が不要となりました。

・また、収益事業開始届出書について、収益事業の概要等を記載した書類及び合併により設立した法人に係る書類の添付も不要となりました。

 

  • III.          資産課税関連

 

  • 1.   個人版事業承継税制の創設

・個人事業者の事業承継を促進するため、相続又は贈与により特定事業用資産を取得し事業を継続していく場合、担保提供を条件に、その取得した事業用資産の価額に対応する相続税又は贈与税の全額を納税猶予する制度が10年限定で創設されました。

 

  • 2.   特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の特例の見直し

・特定事業用宅地等の小規模宅地等特例については、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等が除外されました。但し、当該宅地等の上で事業供用されている減価償却資産の価額が当該宅地等の相続時の価額の15%以上である場合は適用対象となります。

・本改正は2019年4月1日以後の相続等に適用されますが、同日前から事業の用に供されている宅地等には適用されません。

 

  • 3.   非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の見直し

・非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の適用を受けている会社が、一定のやむを得ない事情により資産保有型会社・資産運用型会社に該当した場合においても、その該当した日から6カ月内にこれらの会社に該当しなくなったときは納税猶予の取消事由に該当しないこととされました。

 

  • 4.   民法改正に伴う年齢要件の引下

・民法改正に伴い、下記制度の対象年齢が20歳から18歳に引き下げられました。

① 相続税の未成年者控除

② 相続時精算課税制度

③ 直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例

④ 相続時精算課税適用者の特例

⑤ 非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度

・2022年4月1日以後の相続・贈与に適用されます。

 

  • 5.   民法改正における配偶者居住権の税務の取扱

・民法改正に伴い配偶者居住権が創設されました。配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の建物に住み続けられる権利が与えられました。これに伴い、配偶者居住権の評価方法が定められました。

①配偶者居住権(建物部分)の評価額

②配偶者居住権が設定された建物の所有権の評価額

建物の時価-①

③配偶者居住権(敷地部分)の評価額

土地等時価-土地等時価×存続年数に応じた民法法定利率による複利原価率

④配偶者居住権が設定された建物の敷地の評価額

土地等時価-③

 

 

IV. 個人所得課税関連

 

  • 1.   住宅ローン控除の改正

・消費税引上げに伴う住宅需要変動の平準化のため、2020年末までの間、消費税10%が適用される住宅の取得については住宅ローン控除の期間を3年延長し、13年間となりました。

・2019年10月1日から2020年12月31日までの間にその者の居住の用に供した場合に適用されます。

 

  • 2.   空き家の3,000万円控除の延長・拡充

・相続人が相続により取得した被相続人の居住用家屋等を譲渡した場合、その譲渡所得から最大3,000万円を特別控除する特例措置が4年間(2023年12月31日まで)延長されました。

・また、現行制度では3,000万円控除は被相続人が相続直前まで居住用に供していた家屋に限定されていましたが、被相続人が介護認定等を受け、かつ、相続開始直前まで老人ホーム等に入所していた場合も、被相続人による一定の使用がなされ、かつ、貸付、事業、被相続人以外の居住の用に供されていないことを要件に3,000万円控除が認められることとなりました。

 

  • 3.   仮想通貨の取得価額の算出方法の明確化

・個人が期末に所有する仮想通貨の価額は、移動平均法又は総平均法で算出することとされました。

 

  • 4.   ふるさと納税の見直し

・ふるさと納税の対象となる寄付について、総務大臣が以下の基準に適合する自治体をふるさと納税(特例控除)の対象として指定する見直しが行われました。

①寄附金の募集を適正に実施すること

②返礼品の返礼割合を3割以下とすること

③返礼品を地場産品とすること

・2019年6月1日以後に支出される寄附金に適用されます。

 

  • 5.   確定申告の提出書類等の簡便化

・以下の書類を     確定申告の際に添付(又は提示)しなくてよいこととなりました。

①給与所得、退職所得及び公的年金等の源泉徴収票

②特定口座年間取引報告書

③相続財産に係る譲渡所得の課税の特例を適用する際の相続税額等を記載した書類

④その他一定の書類

・2019年4月1日以後に提出する確定申告等について適用されます。