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「令和4年度税制改正について」2022.4.7

カテゴリー:お知らせ

Ⅰ.法人税関連

  1. 中小企業に対する所得拡大促進税制の見直し

・賃上げによる所得拡大を促進する目的で、適用要件「雇用者給与等支給額が前年度比1.5%以上増加」は変わらず、基本の増加額に対する税額控除率15%に対して、雇用者給与等支給額が対前年度比2.5%以上増加した場合は15%を上乗せて税額控除率30%(現行は教育訓練費等要件を満たせば25%)、教育訓練費が対前年度比で10%以上増加した場合はさらに10%上乗せて税額控除率40%とされ(新設)、令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する事業年度に適用されます。

・控除税額は法人税額の20%が上限です。

2. オープンイノベーション促進税制の拡充

・資金の払込みによる出資の一定額の所得控除を認めるというオープンイノベーション税制の要件について、売上高に占める研究開発費の割合が10%以上の赤字会社にあっては、設立の日以後の期間を15年未満(現行:10年未満)とし、対象となる特定株式の保有見込期間要件における保有見込期間の下限及び取崩し事由に該当することとなった場合に特別勘定を取り崩して益金算入する期間を取得の日から3年(現行:5年)とし、特定事業活動を継続する期間についても3年(現行:5年)とされ、適用期限が令和6年3月31日まで2年延長されました。

3.   少額減価償却資産等から貸付用資産を除外

・少額減価償却資産の取得価額の損金算入制度(10万円未満の全額損金算入及び中小企業等の合計300万円まで30万円未満の全額損金算入)について、対象資産から貸付(主要な事業として行われるものを除く。)用に供したものが除外され、令和6年3月31日までに開始する事業年度に適用されます(所得税についても同様)。

・一括償却資産の損金算入制度について、対象資産から貸付(主要な事業として行われるものを除く。)用に供したものが除外され、令和6年3月31日までに開始する事業年度に適用されます(所得税についても同様)。

4.   完全子法人、関連法人からの配当の源泉所得税の不適用

・一定の内国法人が支払を受ける配当等で次に掲げるものについては、令和5年10月1日以後に支払を受けるべき配当等の源泉所得税徴収を行わないこととされました。

①  完全子法人株式等(株式等保有割合100%)に係る配当等

②  内国法人が直接に発行済株式等の3分の1超保有する他の内国法人の株式等に係る配当等

 

II. 所得税関連

1.   住宅ローン税額控除の見直し

・最近の住宅ローン借入利率水準に合わせるため、年末ローン残高の控除率が1%から0.7%に縮減され、控除対象となる年末借入残高も縮減されました。また、適用対象者の所得要件が2,000万円以下(現行3,000万円以下)に引き下げられ、適用期限が令和7年12月31日まで4年延長されました。

2.   上場株式等の配当所得の所得税と住民税の課税方式の統一等

・現行、上場株式等の配当所得は持株割合が3%未満であれば、課税方式を①総合課税、②申告不要、③申告分離課税から任意選択でき、③申告分離課税を選択した場合、上場株式等に係る譲渡損失と損益通算が可能です。これらの所得は、現行所得税と住民税で異なる課税方式を選択できますので、一部で配当控除や低い税率方式を選択することで課税負担の軽減になっていましたが、今後は使い分けができなくなり、住民税の課税方式を所得税と一致させることとなりました。

・上場株式等の持株割合について、同族会社である法人の株式等と合計して持株割合が3%以上である場合は①総合課税の対象となり、②申告不要、③申告分離課税の選択ができなくなりました。

 

III.     消費税関連

1.   適格請求書発行事業者の登録の見直し

・免税事業者は現行令和5年10月1日の属する課税期間の後の課税期間に適格請求書発行事業者の登録を受けることができないこととされていましたが、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には、その登録日から適格請求書発行事業者となることができることとされました。

・免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受け、登録日の属する課税期間の翌課税期間から適格請求書発行事業者でない事業者になったとしても、その登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までは消費税の納税義務が免除されないこととなりました。

 

IV. 資産税関連

1.   住宅取得等資金の贈与税の非課税措置の縮小

・直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、適用期限が令和5年12月31日まで2年延長され、非課税限度額が省エネ等住宅は1,000万円、それ以外の住宅は500万円に縮小されました。

・適用対象となる既存住宅用家屋の要件について、築年数要件(現行:20年又は25年)が廃止され、新耐震基準に適合するものとされました。

・民法の成年年齢引下げの改正に伴い、現行「20歳以上」とされる受贈者の年齢要件が「18歳以上」に引き下げられました。

2.   法人版事業承継税制における特例承継計画の提出期限の延長

・非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度について、特例承継計画の提出期限が令和5年3月31日から令和6年3月31日へと1年延長されました。但し、令和9年12月31日までとされる特例措置の適用期限の延長はありませんので注意が必要です。

 

V.   納税環境整備関連

1.   帳簿の提出がない場合等の過少申告加算税の加重

・修正申告等があった時前に、帳簿の提示等を求められ、かつ、次に掲げる場合に該当するときは、過少申告加算税等について、10%(次の(2)は5%)が加重されます。

(1)不記帳・不保存であった場合(その提出をしなかった場合)

(2)提出された帳簿について記載が不十分である場合

.   仮装隠蔽又は無申告に係る簿外経費の損金不算入

・仮装隠蔽又は無申告の場合に、税務調査等で納税者が事後的に簿外経費の存在を主張しても、簿外経費の存在が明らかと認められる場合を除き、当該簿外経費は損金不算入とする措置が講じられました。

3.   納税地の特例制度等の見直し

・個人の所得税及び消費税の納税地の変更異動があった場合に提出する届出書については、令和5年分以後は不要となりました。

4.   財産債務調書等制度の見直し

・財産債務調書は現行所得2千万円超かつ財産が3億円以上、国外財産調書は国外転出特例対象財産1億円以上を有する場合に提出義務がありますが、これに加えて所得2千万円以下でも財産が10億円以上の者も提出義務者とされました。

・財産債務調書等の提出期限について、その年の翌年の6月30日(現行:翌年3月15日)とされました。

5.   電磁的記録の保存制度関連の整備

・令和3年度の電帳法改正により、令和4年1月1日以降は、電子データで授受した請求書・領収書等は、検索要件等を満たしたうえで電子データのまま保存することを求められていましたが、改正制度の認知が進んでいない状況にあったため、令和5年12月31日までの2年間は引き続き電子データをプリントアウトした出力書面の紙保存を可能とする宥恕措置が講じられました。