カテゴリー:お知らせ
I. 所得税関連
1. 所得税・個人住民税の定額減税の実施
・デフレマインド払拭等のために、納税者と配偶者を含めた扶養家族1人につき令和6年分の所得税3万円、令和6年度分の個人住民税1万円の合計4万円の減税が行われます(合計所得金額1,805万円以下の者に限る)。
・給与所得者については、令和6年6月1日以後最初に支給される給与等の源泉徴収税額から控除して、控除しきれない金額は7月以降順次控除します。よって給与計算に当たっては、6月1日から給与計算日までに改めて同一生計扶養家族等の変更を調査する必要があります。個人住民税は令和6年6月の特別徴収を行わず、定額減税後の税額の11分の1の金額を令和6年7月から令和7年5月まで特別徴収します。
・事業所得者については、令和6年分の所得税に係る第1期分予定納税額から控除し、控除しきれない金額は第2期分予定納税額から控除、さらに確定申告時に控除します。個人住民税は令和6年度分の第1期分以降の納付額から順次控除します。
・公的年金等受給者については、令和6年6月1日以後最初に支払を受ける公的年金等の源泉徴収税額から順次控除します。個人住民税は令和6年10月1日以後最初に支払を受ける公的年金等の特別徴収税額から控除し、さらに12月以降順次控除します。
・定額減税しきれないと見込まれる方へは、市区町村から支給対象の方へ給付案内がなされる予定です。
2. 子育て世帯等に対する住宅ローン控除の拡充
・子育て支援の観点から、子育て世帯等の個人が令和6年中に居住した場合、借入限度額上乗せとして、新築等認定住宅は500万円上乗せして5,000万円、ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅は1,000万円上乗せして4,500万円と、借入限度額が令和5年中の居住と同水準にされました。
・新築住宅の床面積要件について、合計所得金額が1,000万円以下の者が令和6年12月31日以前に建築確認を受けた場合は40㎡以上に緩和されました。
3. 住宅リフォーム税制の拡充
・既存住宅のリフォームに係る所得税の特別控除について、適用対象者の合計所得金額要件を2,000万円以下(現行:3,000万円以下)に引き下げて、適用期限が令和7年12月31日まで2年延長されました。
・子育て世帯等の個人が一定の子育て対応改修工事をして、令和6年4月1日から同年12月31日までに居住の用に供した場合、工事費用相当額(250万円限度)の10%を所得税控除できることとされました。
4. 税制適格ストックオプションの優遇措置の拡大
・ストックオプションを上場前に権利行使する場合、譲渡制限株式等の要件を満たせば、証券会社等への保管委託が不要となりました。
・権利行使価額の年間限度額は、現行一律1,200万円のところ、設立年数5年未満の会社が付与する場合は2,400万円、5年以上20年未満で非上場会社及び上場後5年未満の会社が付与する場合は3,600万円が上限となりました。
・社外高度人材に係る要件について、国家資格・博士保有等の要件が廃止され、教授及び准教授、上場会社の重要な使用人として1年以上の実務経験がある者等が追加されました。
II. 法人税関連
1. 賃上げ促進税制の強化
・物価高に負けない 賃上げと働き方改善を目的として、中小企業については、原則の税額控除率は現行15%のままで、税額控除率の上乗せ措置を引き上げて現行最大税額控除率が40%から45%に引き上げられました。但し、控除税額は法人税額の20%が上限です。
① 教育訓練費の対前年比増加割合が改正前10%のところ5%に引き下げて雇用者給与等支給額の0.05%以上であれば税額控除率10%上乗せし、
② 新たにプラチナくるみん認定又はプラチナえるぼし2段階目以上認定を受ければさらに税額控除率5%上乗せして、最大税額控除率45%とされました。プラチナくるみんは育児休業取得社員割合等の認定、プラチナえるぼしは女性が活躍できる企業の認定です。
・中小企業については、税額控除限度超過額の5年間の繰越控除が新設されました。
・大企業のうち常時使用する従業員数2,000人以下の法人を「中堅企業」として、給与等増加割合が大企業より有利に適用できる区分が設けられました。
・大企業向け促進税制では、継続雇用者給与等支給額の対前年比3%以上から税額控除できますが、最大税額控除率が30%から35%に引き上げられました。中小企業も、適用要件を満たせば、大企業向け促進税制を適用できます。
・この措置は令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度について適用されます。
2. 交際費等の損金不算入制度の見直し
・交際費等の損金不算入制度について、交際費等から除外される飲食費の金額基準が「1人当たり1万円以下(現行5千円以下)」に引き上げられました。
・この措置は令和6年4月1日以後の飲食費に適用され、「中小企業の定額控除限度額(年800万円)の特例」と「接待飲食費の50%損金算入特例」は3年間延長されます。
3. 中小企業倒産防止共済基金(経営セーフティ共済)の損金算入の制限
・中小企業倒産防止共済の契約を解除し、解除があった後に再契約した場合、解除日から同日以後2年を経過する日までの間に支出する掛金は、損金算入できないこととされました。これは、令和6年10月1日以後の契約解除について適用されます。
4. 暗号資産の期末時価評価課税の見直し
・法人が有する暗号資産で譲渡に一定の制限その他の条件が付されている暗号資産は、期末時価評価課税不要とされました。
5. 中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充
・中堅・中小企業が複数回M&Aを実施して複数の中小企業を子会社化してグループ成長することを後押しするため、改正産業競争力強化法の特別事業再編計画の認定を受けた事業者が、一定のM&Aを行った場合、特別事業再編計画に従って最初に取得をした株式等の損金算入率を90%とし、それ以外の株式等の取得による損金算入率を100%とし、益金算入までの据置期間が10年とされました。
6. イノベーションボックス税制の創設
・内国法人等に対して特定特許権(令和6年4月1日以後に取得又は製作)等の譲渡や貸付けを行った場合に、一定金額の30%を損金算入できる「イノベーションボックス税制」が創設されました。
7. 外形標準課税の対象法人の見直し
・法人が減資を行って資本金が1億円以下になった場合でも、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超える法人は外形標準課税の対象とされました。令和7年4月1日に施行し、同日以後に開始する事業年度から適用されます。
・資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える法人の100%子法人等のうち、資本金が1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超える法人は外形標準課税の対象とされました。令和8年4月1日に施行し、同日以後に開始する事業年度から適用されます。
8. 戦略分野国内生産促進税制の創設
・半導体や電動車などの生産をするための「産業競争力基盤強化商品生産用資産」の取得等をした場合に、販売数量等に応じた金額等の税額控除を認める「戦略分野国内生産促進税制」が創設されました。
III. 消費税関連
1. 自動販売機特例等の帳簿記載要件の緩和
・インボイスが免除される3万円未満の自動販売機等からの購入等及び簡易インボイスの入場券等が使用の際に回収される取引で、帳簿に住所又は所在地の記載が求められていましたが、記載不要とされました。
2. 高額特定資産を取得した場合の事業者免税点制度等の適用制限の見直し
・1千万円以上の 高額特定資産を取得した場合に事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を制限する対象に、金又は白金の地金等の合計額200万円以上を取得した場合が加えられました。令和6年4月1日以後に金又は白金の地金等を取得する場合に適用されます。
3. 外国人旅行者向け免税制度の見直し
・外国人旅行者向け免税制度については、出国時に税関において免税購入された物品の持出しが確認された場合に免税する制度へ見直されます。
4. プラットフォーム課税の導入
・国外事業者がデジタルプラットフォームを介して国内向けに行うデジタルサービスについて、取引高50億円超のプラットフォーム事業者に消費税の納税義務を課す制度が導入されました。
IV. 資産税関連
1. 住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税措置の延長
・直系尊属からの住宅取得等資金贈与に係る贈与税の非課税措置について適用期限が令和8年12月31日まで3年延長されました。
・この非課税措置の延長に合わせて特定贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度も3年延長されました。
2. 事業承継税制の確認申請期限の延長
・事業承継時の相続税・贈与税の負担をなくする特例措置の適用に当たり必要となる特例承継計画について、コロナの影響が長期化したこと等に鑑み、提出期限が2年延長されて令和8年3月31日までとなりました。
3. 土地に係る固定資産税の負担調整措置等の延長
・令和6年度評価替えについては、地域によって地価上昇と地価下落が混在する状況のため、負担調整措置、条例減額制度及び下落修正措置について令和8年度まで3年延長されました。
V. 納税環境整備関連
1. 仮装隠蔽に基づく更正の請求に係る重加算税制度の整備
・現行の重加算税は、仮装隠蔽に基づく更正請求書は対象になりませんが、令和7年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税及び地方税から対象に追加されます。
2. 不正行為で国税を免れた会社の役員等の第二次納税義務の整備
・不正行為により国税を免れ又は還付を受けた会社がその国税を納付していない場合に、徴収不足と認められるときは、その会社の役員等がその滞納に係る国税の第二次納税義務を負うこととなります。令和7年1月1日以後に滞納となった一定の国税に適用されます。
3. 電子納付に係る所要の措置
・法人が、GビズIDを入力してe-Taxにより申請等又は国税の納付を行う場合には、識別符号及び暗証符号の入力、電子署名並びに電子証明書の送信、国税の納付を行う際の識別符号及び暗証符号の入力が不要となります。
・法令上、全ての処分通知等をe-Taxにより行うことができることとするほか、e-Taxにより処分通知等を受ける旨の同意について申請等に併せて行う方式を廃止しあらかじめメールアドレスを登録して同意を行う方式とされます。令和8年9月24日から施行されます。
・ eLTAXを通じた電子納付の対象に、地方税以外の地方公金が追加され、地方税共同機構の業務に公金収納事務を追加する措置が講じられます。地方自治法の一部を改正する法律の施行日から適用されます。
VI. 国際課税関連
1. 国際最低課税額に対する法人税等の見直し
・令和5年度改正で最低15%の法人税が課されるグローバル・ミニマム課税が創設されました。今回は以下の見直しが行われます。
① 構成会社等がその所在地国において一定の要件を満たす自国内最低課税額に係る税が課される場合、その所在地国に係るグループ国際最低課税額をゼロとする適用免除基準が設けられます。
② 無国籍構成会社等が自国内最低課税額に係る税を課されている場合には、グループ国際最低課税額の計算においてその税の額が控除されます。
・次に掲げる外国における税は外国税額控除の対象から除外されます。
① 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税に相当する税
② 外国を所在地国とする特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等に対して課される税(グループ国際最低課税額に相当する金額のうち一定の金額を課税標準とするものに限る)又はこれに相当する税
自国内最低課税額に係る国内ミニマム課税は外国税額控除の対象とされます。
・個別計算所得等の金額から除外される一定の所有持分の時価評価損益等は、特定多国籍企業グループ等に係る国又は地域単位の選択により、個別計算所得等の金額に含めることが認められます。
・導管会社等に対する所有持分を有することにより適用を受けることができる一定の税額控除の額は、特定多国籍企業グループ等に係る国又は地域単位の選択により、調整後対象租税額に加算することが認められます。
・特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供制度について、特定多国籍企業グループ等報告事項等が、提供義務者の区分に応じて必要な事項等に見直されます。
2. 外国子会社合算税制の見直し
・外国子会社合算税制におけるペーパー・カンパニー特例に係る収入割合要件について、外国関係会社の事業年度に係る収入等がない場合はその事業年度における収入割合要件の判定が不要とされます。
3. 子会社株式簿価減額特例の見直し
・子会社株式簿価減額特例は、親会社が子会社から配当を受領して子会社株式の時価を下落させた後、その子会社株式を譲渡して親会社に意図的に損失を発生させることを防ぐため、親会社が受領した配当相当分だけ子会社株式の簿価の引下げを行うものです。子会社から受ける配当のうち、特定支配関係発生後の利益剰余金から支払われた金額は簿価減額から除外できる特例計算について、特定支配関係発生日の属する事業年度内に受けた期中配当も簿価減額から除外できることとされました。
4. 非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動交換のための報告制度の整備
・令和8年1月1日以後に一定の暗号資産交換業者等との間で暗号資産等取引を行う者は、当該暗号資産等取引を行う際、その者の氏名又は名称、住所又は本店等の所在地、居住地国、居住地国が外国の場合は当該居住地国における納税者番号その他必要な事項を記載した届出書を、当該暗号資産交換業者等の長に提出する必要があります。
・当該暗号資産交換業者等は、その年の12月31日において、当該暗号資産交換業者等を通じて暗号資産等取引を行った者が租税条約等の相手国等を居住地国等とする特定対象者の氏名又は名称、住所又は本店等の所在地、居住地国等及び居住地国等が外国の場合は居住地国等における納税者番号、暗号資産等の売買等に係る暗号資産等の種類ごとに、暗号資産等の名称並びに暗号資産等の売買の対価の額の合計額、総数量及び件数その他必要な事項をその年の翌年4月30日までに、e-Tax等で、当該暗号資産交換業者等の本店等の所轄税務署長に提出する必要があります。
・これに伴い、非居住者に係る金融口座情報を租税条約等の相手国等の税務当局と自動交換する報告制度等を見直すこととされています。